ショックです。
ポール牧さんが亡くなりました。
しかも、自ら命を絶って。
実は、最近私は、ポールさんのファンになったばかりだったのです。
郵便局に「貯金の話題」という、毎月発行されるチラシがあります。
私が何かの用事で郵便局に行ったときに、
待ち時間になんの気もなく手にとったチラシ(2005年2月号)。
そこに、ポールさんのインタビュー記事が載っていました。
私は、それまでポール牧さんのことを、なんとも思っていませんでしたが、
その記事は私の心を打つものでした。
それで、そのチラシをもらって、スクラップにして、とっておいていたのです。
それはどんな記事だったかというと、以下のような記事でした。
**********************************
◆喜劇というのはやさしさが原点。
打ちひしがれた人たちに笑いを贈るもの◆
「喜劇を志して、靴磨きや皿洗いをしながら食うや食わずのころ、
母から一通の手紙を受け取りました。
千円を送ってくれて、
『この千円をありがたいと思うなら、どんな人にもやさしくしてあげなさい』
と書いてありました。
千円はあっという間になくなりましたが、
その千円は僕の一生の思い出として心に残っていますね。」
指パッチンで、一世を風靡し、笑いを巻き起こすポール・牧さん。
「喜劇というのは、やさしさが原点。
打ちひしがれた人たちに、笑いを贈るものなんです」と強調されます。
ポールさんが喜劇を志したのは、
図書館で出会ったマルセル・パニョルの言葉から。
「工場から油にまみれて家路に急ぐ人たち、
親兄弟、子供に先立たれた人たち、災害で家を失った人たち・・・・・。
そういう人たちに、たとえひとときでも、
やすらぎと微笑みを与えられる者を喜劇役者といい、
また、そう呼ばれる権利がある」
その言葉に従って、一途にやすらぎを与える喜劇を追い求めてきました。
「下品だったり、弱者を笑いものにしたり、人まねをしてはならない。
今のお笑いはそれがまもられていませんね」
自分のお店を売り払ってまで心血を注いでいた喜劇劇団。
そのマネージャーが、総勢50人もの出演者・スタッフへの給料や
興行収入などを持ち逃げし、銀座や赤坂に膨大な飲み代のツケ、
競馬、競輪の借金まで残していったこともありました。
その額、ざっと一億円。
「いやな思い出ですよ。
だけど、喜劇役者の心意気っていうんでしょうかね。
もっともっと多くの人を喜ばせるんだ、と自分を奮い立たせてブームが起きた。
なんとか借金も返済できました。」
ポールさんのお父さんはお寺の住職で、
はじめはポールさんもお坊さんを目指していました。
ところが、修業先のお寺でひどいイジメに遭います。
夜になると引きずりだされ、柔道有段者に何度となく無抵抗で投げつけられたり、
数人がかりで、座禅に使うキョウサクという棒が6本も折れるほど、
めった打ちにされたり。
そんなポールさんが出会ったのが、マルセル・パニョルの言葉。
ここから人生が変わりました。
僧でなく喜劇役者で、生きる喜びを広められると。
今の世の中にも、いじめや不登校で苦しんでいる人たちはたくさんいます。
「自分にしかできない夢をもつといいんじゃないかな。
自分にはこれができるんじゃないか、
これがしたいということを追い求め、夢中になることです。」
*****************************
この記事を読んで、私はポールさんの気持ちにとても共感して、
ポールさんの人柄を好きになり、ずっと、チラシをとっておいていたのです。
このように、たった数ヶ月前のチラシで、
生きることへの希望を語っていたポールさん。
そのポールさんが、自ら命を絶ったのは、なぜだったのか、とてもショックです。
今日は、悲しい日となりました。
この世から、ひとりの優しい命のともしびが、消えました。
ポールさんのご冥福を心よりお祈りいたします。